英国医療事情:ジョンがバイトしている病院は?

イギリスは社会福祉が充実していて、「揺りかごから墓場まで」と言われる国です。

イギリスの医療システムは、NHS(National Helth System)と呼ばれ、一般税で負担されています。

イギリス国民またはイギリスに3か月以上滞在する人なら、医療費は基本タダ。無料。手術しようが、ICUに入ろうが、医療費はかかりません(薬代は自己負担)。母子家庭への手当ても厚く、それを狙って近隣国から移民になろうとして入ってくる人が多く、英国政府は不正移民撲滅に必死です。

医療費が無料と聞くと、なんて素晴らしい☆と思いがちですが、実はここには大きな落とし穴があります。医療費はタダですが、無料で診察・治療を受けようと思ったら、何か月~何年も待たなければいけないことがほとんど。誰でも治療を受けられる=無料対象枠は常に満杯。保険証を持っていれば、3割負担とはいえいつでもどこでも病院に飛び込める日本とは全く違うのです。

診察・治療を受けるには、

1.GP(General Practitioner:その地域の一般医)に登録する

2.体調が悪くなったらかかりつけGPに予約を入れ、診察を受ける(←かかりつけ医でなければダメ)

※ここでまず予約。救急以外は、ここで3日~1週間など余裕で待たされることが多いらしい。

3.専門的な診察を受ける必要がある時は、GPに紹介状を書いてもらう。

※専門医の診察も、またまた数週間~数ヶ月待ちが珍しくないらしい。

4.専門医の診察を受け、治療・手術など。

診察結果を聞くだけで数週間、その後の治療も数週間~数ヶ月先の予約があたりまえ。

とにかく、待つ。早くて3日、普通に2~3週間、5週間、3ヶ月など、進行の早い病だと診察を受けた時点で手遅れではないでしょうか。

「Sherlock」シリーズ1第2話「The Blind Banker」で、GPと見られるところに職を得たジョンが診察時間中に爆睡、受付の長蛇の列の中で1人の女性が「予約をとっても意味ないじゃない/What's the point of booking an appointment if they can't stick to it?」と文句を言うのは、受診までにこれだけの待ち時間が発生しているからです。何日~何週間も待たされた挙句、(担当医が居眠りしていて)診察してもらえずにまた振出に戻るなんて、いくらこのシステムに慣れていても文句を言いたくなりますね。

とはいえ、これはあくまでも「医療費無料」で診察と治療を受けようと思った場合の話。待つのが嫌、そこまで待てない場合は、それなりの対価を払えばそれほど待つことなく診察・治療を受けることができるようになっています。

つまり「Private」コース。医療費を自己負担するなら、待ち時間短縮可能。地獄の沙汰も金次第、ではありませんが、持てる者と持たざる者の格差が激しすぎるのが階級社会ですので、特に不思議はありません。というより、それなりの医療技術の恩恵の恩恵に預かろうと思ったらそれだけの対価を要求されるのは世界的には当たり前の話で、税金を納めていれば全国民が一定割合の負担で、「どこでも」「好きな時に」「好きな病院で」診療を受けられる日本の社会保険システムが飛びぬけているだけ、と言えるのでしょう。

北欧なども医療費は無料ですけれど、実情は同じ。今すぐ処置をすれば助かる命も、自腹で医療費を払えなければ助からないわけです。

さて、ジョンはsurgeryの仕事を得たとシャーロックに報告しています。surgery=診療所と解釈すると、GPでしょうか。

仕事はいい感じ、と言いながらサラを脳裏に浮かべてSheと言ったことでシャーロックにツッコまれ、ITと言い直す羽目になったジョン(笑) 原作のワトソンは女好きだそうですが、BBCのジョンはあんまりそれらしい色がなかったので、なんとなくとってつけた女好きキャラになったのか最初は戸惑いました。